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⾹川県⾼松市の屋島⼭上交流拠点施設「やしまーる」(設計:周防貴之、2022 年竣⼯)内の作品展⽰(企画:周防貴之/展⽰作家:⽯川直樹・⽬[me]・原摩利彦・SUO)における⽯川直樹の展⽰と対となる書籍。
⽯川直樹による撮り下ろし 74 点の写真と⽂章、周防貴之による建築という視点で屋島と関わり思索を深めた、多⾓的な視点から屋島を記録し、その魅⼒を描き出す⼀冊。
(仕様:A5変形版/224ページ/カラー・モノクロ混在印刷/⽇英バイリンガル)

以下、本書内「はじめに」より

はじめに
高松市屋島山上交流拠点施設「やしまーる」(以下、やしまーる)は2022年8月に完成した。約9年間勤めた建築事務所から独立したばかりだった私は、2016年に行われた国際コンペによって設計者として選出され、それから完成までの約6年半、屋島の今と昔、そしてこれからのあり方に向き合うこととなった。

私が初めて屋島を知ったのは、設計に関わる数年前、直島から高松に向かうフェリーの中である。瀬戸内海から見た屋島は、その独特の形もさることながら、それを越えた圧倒的な存在感を放っており、私は瞬時に屋島という存在の虜になった。独立したばかりの頃の私は、建築家として、これまでに見たこともないような新しいものをつくりたいと常々思っていた。新しさにこそ価値があり、古いものは新しさによって塗り替えられるべきであるとさえ考えていた。しかし屋島と関わり始め、その価値観は大きく揺らぐこととなる。

新しいものを際限なく求め続ける私たちのライフスタイルは、消費という一時的な快楽を求める一方で、日々、ものごとの価値を失わせている。もしかすると、価値を捨て続ける日常に、私たちはすでに疲れ、消費することがいつの間にか快楽から苦痛に変わっているのかもしれない。無意識のうちに遠ざけてきたその事実から、目を逸らすことができなくなってきている。屋島という存在を通して、そんな自分を突きつけられたように感じた。

やしまーるは、屋島の持つ価値を改めて見出し、それを発信する場所として高松市によって構想されたプロジェクトの一つである。この屋島という場所で建築をつくるにあたり、私は、建築がつくりだす「新しさ」から、時間を含めた土地と「つながること」に可能性を感じた。建築が屋島の一部となることができなければ、屋島の魅力を発信するどころか、一時的に新しいものとして消費される存在になり、かえって新しさが屋島という場所を再発見することの妨げにすらなりかねない。そのことを強く意識し、私は屋島が持つ時間的な価値や雄大な地形に、少しでも合流できる建築のあり方を模索することとなった。振り返ってみると、設計に関わった時間は、屋島という大きな存在から、建築の可能性を教えてもらったプロセスでもあったように感じている。

また、やしまーるでは、屋島の様々な特徴を、知識として知るのだけではなく、身体を通して知ってもらうための展示も企画した。それを建築体験と一体のものとしたいと考え、展示を建築の一部として扱いながら、4組の作家に屋島をテーマに作品制作を依頼した。その一人として、写真というアプローチで石川直樹さんにも関わってもらいたいと考えた。旅を続けながら、写真という切り口で地球上の様々な場所と向き合ってきた石川さんにとって、屋島という場所は一体どのように映るのだろうか。そして、その写真を通して、私たち自身はどのような屋島を見出すことができるのだろうか。石川さんという感性を通して現れてくる屋島の姿を見てみたいと思った。

現在、やしまーるには石川さんの視点を通して捉えられた屋島の姿が8点展示されている。しかし、展示スペースに制限があり、それらは石川さんが撮りためた写真のほんの一部にすぎない。本書では、石川さんが見た屋島の地形や人々の生活の痕跡などが、写真という形で、美しく、驚きとともに私たちの前に現れる。それと合わせ、屋島に関わることができた一人の建築家として、私が見てきた屋島を6つの切り口で文章にまとめている。

本書は、異なる職能を持つ二人にとっての屋島の姿が記録されているに過ぎないが、私たちが見た屋島の姿以上に、この本を手に取ってくださった読者一人ひとりの感性によって、屋島という場所が拓かれていくことを願っている。