高松市屋島に建つ茶屋と土産屋として使われていた建築のリノベーションである。この建築は、元々、大正時代に建てられた小さな木造建築が昭和・平成に増改築が繰り返され、時代ごとの使い方に合わせて建築の姿も変わっていった。プロジェクトを始める2019年には3棟組み合わさった建物群がひとつながりのワンルームのような建築として使用されていた。

施主からの要望は、少し手に余る売り場面積をコンパクトにし、時代に合わせたものにしたいというものであった。屋島山上はかつては観光地として盛え、山上エリアには所狭しと旅館やお土産屋などが軒を連ねた。時代は移り変わり、1970年代をピークとして観光産業が衰退を始め、山上エリアでは少しずつ廃墟や空き地が増えた。この建物も旅館の付属施設としてのお土産屋でもあったが、旅館は廃業し、業態を変え、この場所に残った。今回のリノベーションはさらなる時代への適応でもある。

改修にあたり、売り場面積を大まかに半分程度にする必要があった。部分的に解体するなど減築し、内装を新調するプラン検討を行ったが、建築自体を削り取り面積を減らす方法では、機能な要望に応えることはできるが、何かこの建築の根源的な部分に触れられていないように感じられた。打ち合わせを重ねていく中で、施主家族がこの地で代々受け継いできた商売、彼らの生活の痕跡そのものがこの建築が持つ魅力であり、またこの場所の雰囲気を作り出していると感じるようになった。そうした履歴というか、この敷地の小さな歴史のようなものに接続できる建築的アプローチでなければ、いかなる手法も表層的なものになってしまうのではないかとさえ感じるようになった。ある日の打ち合わせの帰り、客も従業員も帰って誰もいなくなったこの木造建築を眺めていると、この場所に100年近く前から存在し続ける大樹のような佇まいを感じられた瞬間があった。時間の積み重ねによってしか作ることのできない重み、数えきれない履歴が建築をその場から一層動かし難く、文字通り土地に根付かせているように感じられた。

土地と建築が強く結びつき、建築はまるで土地の一部のようでもある、という一体性を前提とした建築において、改修は可能か?その問いに応えられるようなプランを検討したいと考え、内装設計的なアプローチではなく、土地そのものに関わるようなやり方を模索した。ダイレクトに土地と関われる可能性を感じ、1/200の縮尺の模型を使ってスタディを行うことにした。一般的に内部改修プランを考えやすい1/50や1/30などの縮尺ではなく、周辺環境や地形など扱うスケールの、建築の内部をメインとしない方法である。

スタディ方法を変えたことで、敷地が持つ場所性と建築がいかに関われるかがポイントとなった。すなわち、メサ地形である屋島の崖地であることやこの場所で営まれてきた地層のような時間的履歴といった、この場所から動かしがたいものをいかに扱うかということである。ある意味では、建築も含めた土地そのものの設計に変わったと言ってもいいかもしれない。ある建築的操作によって、その土地が持つポテンシャルが最大化されるならば、時代が代わりその用途が変わったとしても、その都度使い方を発見し続けられるのではないか。そうした仮説をもとに、敷地内に緩やかな起伏を設けることで、周囲に広がる美しい風景が眺められる丘のような場所を作ることとした。新築される起伏は、既存の建築を包含する地形のようでもあり、一つの建築でもあるような場所にできないかと考えた。部分的に段差が設けたり、一部平坦な床面を設けることで、周囲に呼応した居場所を場所場所に配置していった。既存建築の1階部分が開放され、大屋根のような役割となり、その下に機能に適した場所を見つけていく感覚で各部屋が配置され、その他は開放された木陰のような場所になった。

今回の設計を通して、建築が地形や周辺環境、時間軸も含めた場所性にいかに合流できるか、を考え続けていたように思う。それが可能であれば、建築を思考するにあたって、新築・改修・増築といったアプローチの違いはあまり意味がないものかもしれない。群としての建築とインフラや植栽なども含めた一つの系としての建築行為という捉え方である。建築がデータ化によって共有しづらいもの、依然、その場所にいることでしか体験・認知できないものであることがさらなる可能性を広げてくれるのではないだろうか。屋島は特殊な地形と自然環境、古くから続くユニークな歴史に恵まれた土地であったため、建築が場所につながっていくことで可能性を見出すことができた訳であるが、これは場所が変わってたとしても適応可能なはずである。例えば、都市部で建築が密集しているような場所であれば、そこの建築群がその場所の質を作るものと捉えて、それらをその場所の地形や環境と捉え直せばよい。場所の根本を形成するもののに合流し、その中で場所を再解釈し、価値を再定義することが環境時代における建築の持つ可能性であると感じている。

(商店建築 2023年5月号掲載)